アナトミカの共同開発者であり、日本が誇る名デザイナー・寺本欣児氏が手がけた、フランス製のモーターサイクルレザーコート。
タグに記された「サーティファイブサマーズ」の文字から、2000年前後に製作されたと推定される希少な一着です。
着丈 約81cm(襟の付け根から裾)
身幅 約51.5cm(脇下間)
裄丈 約81cm
デザインの源泉は、1970〜80年代にフランス軍のバイク部隊で採用されていたレザージャケット。
防風性を高めるダブルブレスト構造にフルジップを組み合わせた独自のディテールは、ライダースとトレンチコートが融合したようなユニークな佇まい。ゴルビジュジャケットのような雰囲気も。そこには、フランスならではの機能美とエスプリが宿っています。
ただし、実物ヴィンテージはサイズバランスが野暮ったく、重厚な質感も相まって現代的な装いに落とし込むには難しさがつきまとうのも事実。
そこに寺本氏の手が加わることで、この一着は“再構築”という領域を超え、ヴィンテージの魂を宿しながらも、洗練されたモダン・クラシックへと昇華されています。
まず特筆すべきは、その完成度の高いシルエット。無駄を削ぎ落とし、上品なシェイプラインへと再構成。
ダブルブレストのボタンは片側を小振りにすることで、全体の印象をぐっとスマートに引き締めています。メタルのラッカーボタンの質感も相まって、クラシカルでありながら都会的な顔立ちに。
さらに、使用されているレザーの素晴らしさは筆舌に尽くしがたいほど。
しっとりとした柔らかさと、深みのある光沢感。道具としてではなく、あくまで“ファッションとしての革”を熟知したタンナーによる、極上の仕上がりです。
羽織るだけで背筋が伸びるような高揚感があり、カジュアルからドレススタイルまで自在に格上げしてくれます。
細部にも抜かりはありません。ジップには、エルメスやルイ・ヴィトンでも用いられるフランス・ECLAIR(エクレア)社製を採用。細部にまで宿る美意識と、ヴィンテージに対する深い造詣が、静かに、しかし確かに語りかけてきます。
アナトミカやロッキーマウンテンフェザーベッドで見せたように、ヴィンテージの本質を損なうことなく、現代的なエレガンスを纏わせる──それこそが寺本欣児という稀有なデザイナーの真骨頂。
量産では決して到達できない、一期一会の逸品です。
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